上巻は、どうやら導入部のようだ。 織部は本作のキーパーソンで、屋台骨でもあります。
その過程で、人々は自分の心の奥底に秘めてきたおぞましい記憶から解放されてゆく。
舞台となるのは下野国の北見藩。
そして入れ替わっている間の記憶は、重興自身には残っていません。
しかし、どうも様子がおかしい。 しかも、それについて探っていたある御目の親分は妻もろとも、食あたりに偽装して毒殺された疑いがある。
若き六代藩主・北見若狭守重興が病重篤につき隠居、従弟の尚正が新藩主となり、それに伴い、重興の下で権勢を振るっていた御用人頭・伊東成孝が失脚したのだ。
亜由 ヒロインは、各務多紀という武家の娘ですね。
個人的には、登場人物の中では、お鈴が好きでした。
デビュー三十周年を迎えた宮部みゆきの新作『この世の春』は、そのような仮定のもとで書かれた物語と言える。 明らかになっていく呪いの犠牲者たちの事件は、現代の精神病質に基づく残忍な犯罪に通じる面もあり、その時代を超えた意味合いを持つ。
9深読みかも知れないけれども、北見重興という架空の大名をめぐる物語を通じて、本書には歴史上の不幸な貴人たち、ひいては心を病んだあらゆる人々への鎮魂の祈りが籠められているようにも読める。 2020年は時代物で新作単行本が発売。
人格の変容を扱ったミステリは、国内・海外を問わず数えきれないほど存在している。
トリックも非科学的というかファンタジー要素が強いので、純粋に謎解きとして読むと納得できないところがあるかもしれませんね。
その世話をする為、五香苑で女中として働くことなった多紀は、重興の中に眠るいくつもの人格の存在に気づくー時代物でありながらも、人間の心の闇を描き出したミステリーでした。
五香苑の館守である石野織部は、一見武士らしからぬ飄々とした人柄で、身分の低い者にも気さくに接するが、重興の亡父である先代藩主・成興の代から家老として北見家に仕え、重興の信頼も篤い忠義一筋の人物だ。
藩主を中心に数名の家老が登場するが、一人は江戸家老であったが、家老のチームワークもよく無事難題を解いていく。
伝わってきた情報によると、重興が藩主の座から退いたのはただの隠居ではなく押込(家の存続のため、行跡の悪い主君を重臣の合議によって強制的に監禁すること)であり、原因は重興の心の病だという。
一気読み必至です。
まるで年端もいかない少年のようになったり、ときには男に媚びるような女になったり。
大沢オフィス所属。
1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
99年、『理由』で直木賞。
宮部みゆきっぽさはあまり感じられない作品でしたが、普通に読むには面白い作品だったと思います。
一夜の出来事はやがて、北関東の小国を揺るがす大事件へと発展していく。 作家生活30周年を記念する作品とあってか、大変読み応えがあった作品でした。 しかし、家老が選んだ藩士が活躍する。
7何の罪もない子どもたちがひどい目に遭い、命を奪われるのはやり切れない。 今は家の中には押入れすらない(クローゼットならあるが)。
そんな藩上層部の諍いとは無縁に、領内の長尾村で隠居生活を送っていた元作事方組頭・各務数右衛門と娘の多紀のもとにも、政変の余波は及ぶ。
今後も楽しみですね。
亜由 かっこよくて渋い、おじいさまです! かっこいいと言えば、重興はまさに、 「史上最も孤独で不幸なヒーロー」と言えるのではないでしょうか? 誠一郎 そうだね。
この、 合理主義と非合理世界の混在こそが、本作のたぐいまれな企みであるとも言えますね。 免責について(注意事項)• 関連記事> KADOKAWAによる「」が開設されています。 今回の謎は少し趣向を変えて、小なりといえ関東近郊の徳川譜代の大名家。
141992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。 果たして重興の身に何が起きたのか、そして多紀は重興を救うことができるのか。
ところが私、自分が知らないだけで、実際に北見藩というのが存在し、主君押込の事件があって、それらの史実をベースにしてフィクションを構築しているのだろうと、恥ずかしながら途中まで完全に思い込んでいました。
誠一郎 宮部さんとこよりさん、運命的な巡り合わせでしたね。
藤沢周平の作品に於ける「海坂藩」と同様の、実在しない架空の藩です。
あ、少し咳も出ます。 どちらかというと、少女マンガを読み終えたような感じ?? そうちょっとメルヘンチックな要素もあるのです。 それでは、良い読書体験を! なお、宮部みゆきさんの作品はでも読むこと(聴くこと)ができます。
15だけど、それでもやっぱり他の人とは レベル違うなって思う所があるんだけど…。 江戸時代中期が舞台である以上、そうした知識のない多紀たちは各自に割り当てられた役目を中心に、手探りで真実に迫ってゆくしかないのだが、「江戸時代の人間ならこのような時にどう考え、どう行動するか」が極めて自然かつリアルに再現されている点が本書の特色であり、最大の読みどころと言えるだろう。
下野二万石の小国は、藩主の強制隠居という激震に見舞われた。
憂愁に鎖された五香苑に吹いてきた春風のような彼女と身近に接することで、重興の心は開いてゆく。
「霊験お初捕物控」シリーズの主人公・お初は自身の特殊な能力によって事件の真相に迫ってゆくし、「三島屋変調百物語」シリーズの主人公・おちかは、自身が聞き役となる「変わり百物語」で訪問者たちの語る怪談を聞き、その経緯で数々の怪異を知る。
たしかに時代小説なのですが、サイコスリラー的要素や、ミステリー的な要素の方が強かったので、時代小説的な用語や時代背景が一切気にならず、最後まで一気に読み切ることができました。 important;padding:3px 6px;float:left;box-shadow:inset 2px 2px 2px rgba 0,0,0,. なんか、鼻風邪をひきました。
ですので、この小説の最大の魅力は、謎解きにあるのではなく、登場人物にあるのではないかと思います。
この小説の一番の面白さはその謎解きにあります。
居城から別邸・五香苑へと移った重興は、元家老の石野織部や主治医にも真実を語らず、座敷牢に籠り、時に少年のように、時に女郎のように振る舞って、周囲を困惑させた。